2007年07月07日

その夕陽を浴びながら


あきらめて

一緒にいる日もあった
あきらめられずに
一緒にいる日も

そして かたわらにいた
ずっと そうしていた


posted by 水の紀 at 23:58| ドバイ | 結婚 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

お茶の時間を待ちながら


たえまなく
あなたを呼ぶこえが聞こえる

あなたは
それに耳をかたむけている

わたしの傍で
向こうを 見ている


posted by 水の紀 at 23:57| ドバイ | 結婚 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

音に


わたしはひとつの
おとになりたい
どこまでものびる
いっぽんの
いろのないおとになりたい

わたしはこのせかいを
とおりすぎる
おとになりたい
かぜのようにざわつかず
みずのようにすがたをかえず
ひかりのようにくらまさず

むおんのような
おとになりたい


posted by 水の紀 at 23:55| ドバイ | とうめいな大地 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

あなたがわたしにこぶしをふるった

   1

あなたがわたしのために
最後に食事を作ったのは
あなたに打たれて
起き上がることができない
冬の夜だった

コショーのたっぷり入ったシチュー
あんなに塩辛いシチューは
わたしの掌からは生まれてこない
あなたの汗の味だった

あなたの汗をなめて
わたしはたしか
おいしい、
と言ったのだ


   2

私たちの病を
昼食を終えたテーブルの上で
わたしは解剖する

菜を刻む包丁で

あなたは ふるえ
部屋の鏡を割りはじめる

あやまちと
たれも言えずに


   3

わたしがわたしであるために
あなたはわたしの身体を打つ
あなたがあなたであるために
あなたはわたしの身体を打つ

そしてわたしの言葉の刃は
あなたの完璧な心を2つに割った

あなたの割れた心からは
割れた思いがほとばしる

わたしの裂けた唇は
もうあなたにどんな思いも伝えることはできない


   4

耳をひらいて
わたしは自分に
静けさをプレゼントしよう

木の芽が吹き出した
春の昼下がり

今日一日
あなたに沈黙をプレゼントしよう


   5

破棄された婚姻を
雨風から庇(かば)い
暖めかえす、この家で

わたしとあなたの
「暮らし」への没頭はつづく

左目をふちどる青あざが
まるで、わたしとあなたの関係から逃れられない幼子のように
ひっそりと、しみこんでくる


   6

私とあなたには一問一答が
似合うと思わないか

ルールはこうだ
答えには決して不足を言わない
問いを問い質さない

それから
ゆっくり進めること


   7

あなたは、
皮下出血でフーセンガムのようにみるみる膨らむ
わたしの額を見て
子どものように、笑った

わたしのたましいも、
あなたと一緒に笑った


   8

正しいとか
まちがっているというのは
問題ではない

責めるべき自分があるとき
ひとは他人を傷(いた)める

わたしもそうだ


   9

わたしとあなたの関係は
あまりにも完璧で

ふたりを取り囲む白い壁に守られて
外の世界へはみ出すことができない

だからわたしの詩表現(ことば)は
こらえきれなかった関係をうつし出す
幻燈のようなもの


   10

あなたはあなたのやり方でいい
わたしはわたしのやり方でいく

あなたはわたしに
わたしがまちがっていた、と言わせたい

わたしは決裂をのぞむ

わたしがのぞむのは
あなたの声があなたの声として
聞こえる場所にいることだ
そしてわたしは、できるなら立っていたい

決裂の意味が、わかるか
呪文のように響くあなたの声を
わたしじしんの声と
聞き分けることだ


   11

口は災いのもと
沈黙はそれを透かして見せる

心はおしゃべり
それもまた災いをうむ

沈黙のふところは深い
それはあなたの拒絶(だんまり)ではない
それはわたしの悲観(だんまり)ではない

おのおのが、生きている
それを証(あか)す いのちの深さ


   12

私はレコードを聴いていた
そこへあなたが入ってきた

それからあなたは出て行った

レコードはまだ、回っている
私の時間が戻ってきた


   13

心はあなたを受け入れている
じゅうぶんすぎるほど
わたしの心は広くて広くて

広くて広くて、からっぽだ

ただ、からだだけが
あなたに応えない

この一本の樹木


   14

ヒトラーは殺した
なぜころしたか

ヒトラーは生まれた
なぜ生まれたか

ヒトラーは世界を癒そうとしていた
あなたと同じだ


   15(我)

自分は全てを知っている、
ただ、箱を開けていないだけだ、と。

箱をあけてみれば
真実が明らかになるのだと。

箱の中、
そこにも自分が入っているのに。


   16(起き上がれぬ朝に)

あなたの暴力は
あなたの本質ではない
あなたがわたしを打つことは
あなたとわたしの関係の
本質ではない。

本質は
きっと
パーフェクトな姿をたもっている。
ただ
そう信じるための肉体がわたしには必要で
わたしの
肉体に
穴が
あいただけだ


   17

目に見えない
言葉にすらならない
観念的な理由で
なぐられるのはなぜ

あなたの「正しさ」が
わたしを「しつけ」るのか

わたしの魂のNOを
死の箱へ封じ込めてでも

あなたの「正しさ」が
それほどにまで力をもつのはなぜ

あなたの信じる道が
わたしの道を閉ざすのはなぜ


   18(椅子の下から)

あなたが
力ずくで
思い通りにしようとする

ここは
別世界だとおもう

わたしの
かなわない力がある
その下でわたしはじっと息をこらえる

そこからは
なんとはっきり世界が見えたことだろう


   19(午後3時2分)

わたしはもう
何も言わない
あなた自身があなたに
じゅうぶん言いきかせて
くれるだろう


   20

スケールの大きな観念に
よいしれるとき
それは観念を受け容れた
じぶんの心の広さに
魅入られているのだ

宇宙のように
くうきょなひろさ


   21

あなたはわたしを
力まかせに打ちたおし
そして、生まれかわったか

わたしはあなたの力で
骨がゆがんで
ちがう 形になった


   22

出会った頃
あなたはこう言った
「ぼくは死んでいる
あなたを愛せるだろう」

わたしはこたえた
「わたしは存在していない
そしてあなたを愛するでしょう」

わたしはあなたから生まれた
あなたはわたしから生まれた

そして、
なぜ生んだの、と
地団駄をふんでいる

あなたはわたしを生んだ
わたしはあなたを生んだ

なぜと、問うな
わたし、よ。


   23(とうめいな大地)

この からだは
あなたの 花だ
めでるなり つみとるなり
すきなように するがよい

このからだは
あなたの小鳥をはぐくむカゴ
あなたの未来をまもりとおす
けしてこわれない、だからこわしてはならない

このからだ
自我の化身
わたしのいのちをおさめる箱
あなたにはこわせない
とうめいな大地


   24

本当にあなたはそこにいるか
あなたの影の中で

わたしのからだじゅうの
あらゆる穴から
すう、すうと、
清水のつめたさの
小風が吹き出る

そこにいるのは
あなたか
本当に


   25

あなたは
沈黙しているわたしが
すき

わたしはあなたを
見ていると
しゃべりたいことが
ふえていった

あなたは黙り込むことが
多くなって ただ
そっけない記号を差しだす

わたしはそんなふうに
記号をうつしだす
あなたという光源に
呼びかけている

posted by 水の紀 at 23:53| ドバイ | とうめいな大地 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

理解


神さまを みつけた

だれもすわるもののいない
椅子のことだ

posted by 水の紀 at 23:53| ドバイ | 拾遺 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

かくれんぼ


ゲームは始まったけれど
わたしは隠れないよ

見つかりたいのに
隠れることなどできないよ


posted by 水の紀 at 23:52| ドバイ | とうめいな大地 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

鬼ごっこ


すべり台もない
壁もない
トンネル
一本のシラカバさえない
この平原で

あなたは今夜
わたしの最後の一本足を
ねらってる

posted by 水の紀 at 23:51| ドバイ | とうめいな大地 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

旅するさかな


動かなくなったあなたの身体に
お尻をのせて頭をなでていると

あなたはベンチになった

そのベンチで五月の風に吹かれていると
友だちがやってきた

友だちを抱きしめていると
やがて大きな木になってしまったので

その木に登って五月雨を浴びた
若葉の間で鳥がさえずる

耳の奥でゴウゴウと音が鳴る
木が雨水を吸い上げている

ようやく太陽が現れて
たちのぼる蒸気にのって空へ上り

海の真ん中へ

行ってきます、
ベンチと、木と
かわいい小鳥たちへの土産話のために。

posted by 水の紀 at 23:50| ドバイ | さかな | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

夏のさかな


遠い朝、長い夜、
ハンダ付けされた錠と濁った水のなかで魚になった。

気がつけば、
柵も枷もないかわり「なんにもない」にとりかこまれている。

つらぬく海流と出会い、日没を追うのは
夜のやさしさを知っていたから。

朝は、朝の輝きをかがやく。
痛いほどの希望の予感と、痛いほどの希望の欠如。
朝はかるがると闇を越え
ただ、慈悲のごとく影をつくる。

木陰にすわり、足先を朝陽であたためる。
今日一日、歩いていけるだろう。

posted by 水の紀 at 23:49| ドバイ | さかな | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

春のさかな


おだやかで、ぽかぽかと春の陽気。
庭にタンポポ、ユキヤナギの最後の花がみつよっつ。
ツツジは満開、
一昨年庭にほうったドングリの、漉いたばかりの和紙のようにやわらかな若芽、
きょうは、私がかつて結婚した人の誕生日。

命日は、わすれてしまおう。
あの人の死を問うはやめるの。

ただ、庭から玄関へ通じる、日の当たる小径をみつめていると
あなたが逝った、そのことを
あなたの存在のように、そのことを感じるの。

そしてあなたが、
私の庭の
若芽を吹く一本の樫の木のように存在するのがわかる、

すがりつくあなたの手を
なんで私は振り払ったかな、
沼に落ちた水晶の指輪を取りに行ったのだ、
それがあれば、持ちこたえると。
指輪も手に入らなかったし、
泥にまみれた私はもはや愛されもせず。

きょうは、自死したあの人の誕生日。
私はとてもおだやかなの。

泥は乾いて四肢にこびりついている。
あの沼にすむ、魚のウロコのように。

posted by 水の紀 at 23:49| ドバイ | さかな | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

五月の夢


たいていは、そう
夢を最後までみることはない
きっと途中で
目をさます
結末への想い
やり残したことへの想いは
夢の外へ のびていく
夢の外では
なにごとも(おしまい)にできるのだ
夢は夢の外で実現する

そして(おしまい)

posted by 水の紀 at 23:47| ドバイ | 拾遺 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

海の時間


ひざをかかえ
胎児の姿で
沈んでいく女
海の底、底へ

サカナたちの
kissを受け
ボールのように
あそばれて

するりとぬけて
また落ちていく
ゆっくりゆっくり
海が時間を
なめるはやさで

いるものも
いらないものも
女といっしょに
おちていく

海の青が
かなしみを
かなしみで
染め上げていく

posted by 水の紀 at 23:47| ドバイ | 小さな花 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

三月のうた


三月の
水の流れは
ぴろぴろ、ぴろろ
春の疾風にふるえている
シュロの葉影を見つめながら
ふと

ああ そうか

わたくしは
水でうすめられていくあおい絵のぐ

この胸の中で起きている出来事と
足もとの小さな草花が
断絶しながら
同じ場所で息をしている

posted by 水の紀 at 23:46| ドバイ | 拾遺 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

春の嵐


風がわたしを
縦に、横に
左に、右に
そして上下に伸ばしていく

とうとう わたくしも
この屋根を
包みこむほど広くて白いシーツになりました

パタパタパタ…
自分で自分を打ちはずむ
posted by 水の紀 at 23:44| ドバイ | 拾遺 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

マシマロ亭


わたしは昔、砂糖粒だった。
シロップやドロップと友だちだった。
ある日、塩粒に会いに、海までやってきた。

ヤッホーーーー!

塩粒は、会いにきてくれたことを、とても喜んでくれた。
わたしはうれしかった。
だって、
塩粒に会いに行くよ、といったとき、
友だちはみんなオイオイ
あまい涙を流したから。

塩粒とまいにちあそんだ。
まいにちまいにちあそんだ。
まいにちまいにちまいにち、あそんであそんであそんで
ずっといっしょだったが、
すっと塩粒と砂糖粒だった。

「それでわたしはゼラチンと結婚して、
海の見える崖っぷちで
こうして潮風に吹かれているのでございます」

posted by 水の紀 at 23:43| ドバイ | マシマロ亭 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

たとえ母の胸にピカチュウが眠りついたとしても


●"ちゃん"付けで呼ぶには赤ん坊は尊すぎる●

私の中には赤ん坊がいる。
ぴちぴちに太っている。
欲求不満でバクハツ寸前のピカチュウなのだ。
赤ん坊は、感応する生物。

このピカチュウは、
普段いないふりをしている透明ピカチュウなのだ。
だけど、ある場所でバクハツしないではおれない。

そこは自分が愛されるつかのまの場所。
ピカチュウは、そこでバクハツを自分のものにするのだ。

その愛は、肉体的に働きかけられ表現された愛。
ピカチュウは、肉体的愛のもとにやすらぐ。

●わたしがピカチュウの存在に気づいたのは●

慈雨の雨。

わたしは、
雨が降るたびに雨に感謝して暮らしていたわけではなかった。

雨は、感謝せよと言わないのだ。
そしてただ降る。
もし、雨に、肉体が、実体があったとしたら。

もし、雨に、肉体が、実体があったとしたら。
わたしは、雨に感謝して暮らすかもしれない。
雨に、肉体がなかったときよりもやすやすと。
そして、雨に願うかもしれない。
雨を呪うことが、あるかもしれない。
雨に、肉体がなかったときよりもやすやすと。
もし、雨が自分に感謝せよといわなくても、
感謝しろと言われているような気がしてしまうかもしれない。
もし、雨が私に一言も言葉をかけなくても、
雨は私を見ている、私を感じていると
おもうかもしれない。
雨に、肉体がなかったときよりもやすやすと。

そこに肉体を感じたとき
その相手が雨であってでさえ、
わたしは甘え愛を抱く。
雨が降るのは当然だと思う。
雨のことをほかの何よりも深く愛する。
来る日も来る日も雨を願い、
もう一度雨が降ることを願うだろう。

そして雨が降るのは当然だと思う。
降ってほしいのに降らないと憎み
降らないでほしいのに降れば、邪魔と感じるだろう。
そこに肉体を感じたときには
その相手が雨であってでさえ、
わたしは甘え、愛憎を抱くだろう。

肉体は、生まれ落ちてしばらくのあいだ、
周囲のあらゆる気配に感応する。
母の肉体をよりどころとして。

ピカチュウは、母の胸もとでバクハツする。
何度でも、何度でも。
その胸もとから出発しようともがく、まるい影。

●愛されている。ただそれだけではもう●

今日には雨の国を去り、立ち歩いていこう。
それでも雨は、降るだろう。
雨は雨で、私は私で。

雨音のなかでくりかえした爆発の余韻を遠く聞きながら。

ながいあいだ、雨に愛されていたが
私の心は、雨を愛するには貧しかった。
いっそ雨音に変化(へんげ)すると願った時、私は肉体が絶叫するのを聞いた。
(わたしを忘れないでよォ・・・)

愛されているだけでは、もう、愛が
愛を求めるだけでは、もう
足りないのだ。もっともっと愛が、
慈雨では補いきれない、
私の愛が、
雨が。

posted by 水の紀 at 23:42| ドバイ | たとえ母の胸にピカチュウが眠りついたとしても | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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