2007年07月07日

春のさかな


おだやかで、ぽかぽかと春の陽気。
庭にタンポポ、ユキヤナギの最後の花がみつよっつ。
ツツジは満開、
一昨年庭にほうったドングリの、漉いたばかりの和紙のようにやわらかな若芽、
きょうは、私がかつて結婚した人の誕生日。

命日は、わすれてしまおう。
あの人の死を問うはやめるの。

ただ、庭から玄関へ通じる、日の当たる小径をみつめていると
あなたが逝った、そのことを
あなたの存在のように、そのことを感じるの。

そしてあなたが、
私の庭の
若芽を吹く一本の樫の木のように存在するのがわかる、

すがりつくあなたの手を
なんで私は振り払ったかな、
沼に落ちた水晶の指輪を取りに行ったのだ、
それがあれば、持ちこたえると。
指輪も手に入らなかったし、
泥にまみれた私はもはや愛されもせず。

きょうは、自死したあの人の誕生日。
私はとてもおだやかなの。

泥は乾いて四肢にこびりついている。
あの沼にすむ、魚のウロコのように。

posted by 水の紀 at 23:49| ドバイ | さかな | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

夏のさかな


遠い朝、長い夜、
ハンダ付けされた錠と濁った水のなかで魚になった。

気がつけば、
柵も枷もないかわり「なんにもない」にとりかこまれている。

つらぬく海流と出会い、日没を追うのは
夜のやさしさを知っていたから。

朝は、朝の輝きをかがやく。
痛いほどの希望の予感と、痛いほどの希望の欠如。
朝はかるがると闇を越え
ただ、慈悲のごとく影をつくる。

木陰にすわり、足先を朝陽であたためる。
今日一日、歩いていけるだろう。

posted by 水の紀 at 23:49| ドバイ | さかな | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

旅するさかな


動かなくなったあなたの身体に
お尻をのせて頭をなでていると

あなたはベンチになった

そのベンチで五月の風に吹かれていると
友だちがやってきた

友だちを抱きしめていると
やがて大きな木になってしまったので

その木に登って五月雨を浴びた
若葉の間で鳥がさえずる

耳の奥でゴウゴウと音が鳴る
木が雨水を吸い上げている

ようやく太陽が現れて
たちのぼる蒸気にのって空へ上り

海の真ん中へ

行ってきます、
ベンチと、木と
かわいい小鳥たちへの土産話のために。

posted by 水の紀 at 23:50| ドバイ | さかな | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。