2007年07月07日

鬼ごっこ


すべり台もない
壁もない
トンネル
一本のシラカバさえない
この平原で

あなたは今夜
わたしの最後の一本足を
ねらってる

posted by 水の紀 at 23:51| ドバイ | とうめいな大地 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

かくれんぼ


ゲームは始まったけれど
わたしは隠れないよ

見つかりたいのに
隠れることなどできないよ


posted by 水の紀 at 23:52| ドバイ | とうめいな大地 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

あなたがわたしにこぶしをふるった

   1

あなたがわたしのために
最後に食事を作ったのは
あなたに打たれて
起き上がることができない
冬の夜だった

コショーのたっぷり入ったシチュー
あんなに塩辛いシチューは
わたしの掌からは生まれてこない
あなたの汗の味だった

あなたの汗をなめて
わたしはたしか
おいしい、
と言ったのだ


   2

私たちの病を
昼食を終えたテーブルの上で
わたしは解剖する

菜を刻む包丁で

あなたは ふるえ
部屋の鏡を割りはじめる

あやまちと
たれも言えずに


   3

わたしがわたしであるために
あなたはわたしの身体を打つ
あなたがあなたであるために
あなたはわたしの身体を打つ

そしてわたしの言葉の刃は
あなたの完璧な心を2つに割った

あなたの割れた心からは
割れた思いがほとばしる

わたしの裂けた唇は
もうあなたにどんな思いも伝えることはできない


   4

耳をひらいて
わたしは自分に
静けさをプレゼントしよう

木の芽が吹き出した
春の昼下がり

今日一日
あなたに沈黙をプレゼントしよう


   5

破棄された婚姻を
雨風から庇(かば)い
暖めかえす、この家で

わたしとあなたの
「暮らし」への没頭はつづく

左目をふちどる青あざが
まるで、わたしとあなたの関係から逃れられない幼子のように
ひっそりと、しみこんでくる


   6

私とあなたには一問一答が
似合うと思わないか

ルールはこうだ
答えには決して不足を言わない
問いを問い質さない

それから
ゆっくり進めること


   7

あなたは、
皮下出血でフーセンガムのようにみるみる膨らむ
わたしの額を見て
子どものように、笑った

わたしのたましいも、
あなたと一緒に笑った


   8

正しいとか
まちがっているというのは
問題ではない

責めるべき自分があるとき
ひとは他人を傷(いた)める

わたしもそうだ


   9

わたしとあなたの関係は
あまりにも完璧で

ふたりを取り囲む白い壁に守られて
外の世界へはみ出すことができない

だからわたしの詩表現(ことば)は
こらえきれなかった関係をうつし出す
幻燈のようなもの


   10

あなたはあなたのやり方でいい
わたしはわたしのやり方でいく

あなたはわたしに
わたしがまちがっていた、と言わせたい

わたしは決裂をのぞむ

わたしがのぞむのは
あなたの声があなたの声として
聞こえる場所にいることだ
そしてわたしは、できるなら立っていたい

決裂の意味が、わかるか
呪文のように響くあなたの声を
わたしじしんの声と
聞き分けることだ


   11

口は災いのもと
沈黙はそれを透かして見せる

心はおしゃべり
それもまた災いをうむ

沈黙のふところは深い
それはあなたの拒絶(だんまり)ではない
それはわたしの悲観(だんまり)ではない

おのおのが、生きている
それを証(あか)す いのちの深さ


   12

私はレコードを聴いていた
そこへあなたが入ってきた

それからあなたは出て行った

レコードはまだ、回っている
私の時間が戻ってきた


   13

心はあなたを受け入れている
じゅうぶんすぎるほど
わたしの心は広くて広くて

広くて広くて、からっぽだ

ただ、からだだけが
あなたに応えない

この一本の樹木


   14

ヒトラーは殺した
なぜころしたか

ヒトラーは生まれた
なぜ生まれたか

ヒトラーは世界を癒そうとしていた
あなたと同じだ


   15(我)

自分は全てを知っている、
ただ、箱を開けていないだけだ、と。

箱をあけてみれば
真実が明らかになるのだと。

箱の中、
そこにも自分が入っているのに。


   16(起き上がれぬ朝に)

あなたの暴力は
あなたの本質ではない
あなたがわたしを打つことは
あなたとわたしの関係の
本質ではない。

本質は
きっと
パーフェクトな姿をたもっている。
ただ
そう信じるための肉体がわたしには必要で
わたしの
肉体に
穴が
あいただけだ


   17

目に見えない
言葉にすらならない
観念的な理由で
なぐられるのはなぜ

あなたの「正しさ」が
わたしを「しつけ」るのか

わたしの魂のNOを
死の箱へ封じ込めてでも

あなたの「正しさ」が
それほどにまで力をもつのはなぜ

あなたの信じる道が
わたしの道を閉ざすのはなぜ


   18(椅子の下から)

あなたが
力ずくで
思い通りにしようとする

ここは
別世界だとおもう

わたしの
かなわない力がある
その下でわたしはじっと息をこらえる

そこからは
なんとはっきり世界が見えたことだろう


   19(午後3時2分)

わたしはもう
何も言わない
あなた自身があなたに
じゅうぶん言いきかせて
くれるだろう


   20

スケールの大きな観念に
よいしれるとき
それは観念を受け容れた
じぶんの心の広さに
魅入られているのだ

宇宙のように
くうきょなひろさ


   21

あなたはわたしを
力まかせに打ちたおし
そして、生まれかわったか

わたしはあなたの力で
骨がゆがんで
ちがう 形になった


   22

出会った頃
あなたはこう言った
「ぼくは死んでいる
あなたを愛せるだろう」

わたしはこたえた
「わたしは存在していない
そしてあなたを愛するでしょう」

わたしはあなたから生まれた
あなたはわたしから生まれた

そして、
なぜ生んだの、と
地団駄をふんでいる

あなたはわたしを生んだ
わたしはあなたを生んだ

なぜと、問うな
わたし、よ。


   23(とうめいな大地)

この からだは
あなたの 花だ
めでるなり つみとるなり
すきなように するがよい

このからだは
あなたの小鳥をはぐくむカゴ
あなたの未来をまもりとおす
けしてこわれない、だからこわしてはならない

このからだ
自我の化身
わたしのいのちをおさめる箱
あなたにはこわせない
とうめいな大地


   24

本当にあなたはそこにいるか
あなたの影の中で

わたしのからだじゅうの
あらゆる穴から
すう、すうと、
清水のつめたさの
小風が吹き出る

そこにいるのは
あなたか
本当に


   25

あなたは
沈黙しているわたしが
すき

わたしはあなたを
見ていると
しゃべりたいことが
ふえていった

あなたは黙り込むことが
多くなって ただ
そっけない記号を差しだす

わたしはそんなふうに
記号をうつしだす
あなたという光源に
呼びかけている

posted by 水の紀 at 23:53| ドバイ | とうめいな大地 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

音に


わたしはひとつの
おとになりたい
どこまでものびる
いっぽんの
いろのないおとになりたい

わたしはこのせかいを
とおりすぎる
おとになりたい
かぜのようにざわつかず
みずのようにすがたをかえず
ひかりのようにくらまさず

むおんのような
おとになりたい


posted by 水の紀 at 23:55| ドバイ | とうめいな大地 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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